母方の祖母の話
中流家庭で何かに困ったことはなかったし、祖父母は大学生の頃まで特に変わらず健康。
両親は健康そのもので、大学まで行かせてもらったし、ずっと実家暮らしの甘えを許してくれていた。
僕の母方の祖母は、7人兄妹に加えて家族・親戚が医療関係で働き、逞しく戦後を乗り越え・生き抜いてきた。
女が強い家系で姉妹同士は今も仲良く元気だ。
それだけなら、元気な祖母に加えて大叔母たちがおり可愛がってくれて、遠い親戚に会おうと思えば会えるし、僕には何人もの再従兄弟(はとこ)がいる。
今の時代を思うと本当に恵まれていると思う。
僕の母が学生の時に祖父は亡くなり、その後すぐ同居していた姑も後を追うようにして亡くなった。
それから、祖母はずっと一人で暮らしてきた。
そんな祖母の兄妹達に、孫だけでなくひ孫が多くなり、そして誰もが知る学校へ通い、あの有名企業で働く、もしくは親戚の医療関係を継いだり、婚約・結婚・出産…
そんなことが多くなるほどに、年々と僕らしさを愛してくれるのではなく、再従兄弟や従兄弟含む親戚の誰々のようになってね。
が、多くなってきた。
はとこの〇〇さん、が働いてる会社は給料が良いらしいわよ!!
やっぱり、大手の会社は福利厚生が…
彼女・お嫁さんに会える日が楽しみだなー!
忘れられないのが、東日本大地震の直前まで、東京電力なんて良いんじゃない?は、今思うと本当に恐ろしい。
僕は祖父母っこで親に近い存在として見ている。そして、僕は親に対して思春期の反抗期が控えめであったがため、親に対する関わりと同じで、主張や反論が出来ずに抑えてしまっていた。
なので、そんな祖母から何か言われる度、本当は苦しくて苦しくて叫びたかった。
昔のように、元気に生きていることを見ていてほしかった。
なので、例えば自分が良いと思って選んだ進路や専攻、自分なりに考えて選んだこと、そして祖母の価値観・時代の変化までもが、僕がまるで間違ったことをしていて、裏切っているような気持ちが重なっていた。
今、一人暮らしをして親とも祖父母とも少し距離を置くことで、本当に少しずつ考えられるようになってきた。
そんな母方の祖母、身体が弱くなり去年から施設で一人暮らし始めた。
僕が好きだった大きな木がある庭は、今では日が射さない足元の鉢植えはすぐ枯れるコンクリート固めのベランダへ…。
思い出の家と良い香りがした土の上には、分譲され細長い家がひしめいて生えている。
よくある話だが、変わる姿は悲しい。
ペットもいない、車の免許は返還、ゴルフやダンスなど趣味から遠ざかり、家事全般を施設が代行、料理は出たものを食べる。
そして、その姿を母自身が目にし恐らくショックを受けているのだろう。そこは本当に共感する。
けれど、母が祖母に会う度に…
僕が施設に遊びに行くから待っててね、
来月のこの頃には僕が行くからね、と言うのだ。
(実際は自分のタイミングで足を運んでいるから、今となれば母の言葉は関係ないのだけど…。)
(ともかく、こんな時一人暮らしをしていて良かったと思う。悲しいけど自分の予定を優先できるから。)
大好きな祖母のお見舞いに行くのは好きだ。
けど、そうやって求められるのが苦しい。
だけど、あまり言いたくはないが先が長いわけでもないとも思うから、極力顔を出したい。
けど所詮孫なのだ、強く求めないで欲しいと思ってしまう。そして、そんな自分が嫌いになる。
どんな人とも、程々の距離感で付き合えたら良いのに。